広がる小規模保育の可能性 〜小規模保育の未来を語る2018 in横浜

荒木田副市長(左)と駒崎理事長(右)


6月最終日は、全国小規模保育協議会 横浜連絡会主催のフォーラム『小規模保育の未来を語る2018 in横浜 ~子ども・子育て支援制度開始から3年、小規模保育の可能性を語る~』に参加しました。
全国小規模保育協議会理事長 駒崎弘樹さんは、冒頭、横浜は小規模保育発祥の地であることに触れ、横浜のこれまでの取り組みとこれからの展望に期待する旨の挨拶がありました。また保育ソーシャルワークの概念を広めることを提案。子どもだけをみるのではなく、より手厚く親子に寄り添うことが出来る小規模保育ならではの可能性に言及されました。
フォーラムの基調講演は、今年から4人目の横浜市副市長に就任された荒木田百合さん。「横浜市のめざす子ども子育て支援策と小規模保育に期待すること」をテーマにしたお話でした。
荒木田副市長自身、お子さんを大規模認可園ではなく、ご本人の言葉を借りれば、「おばあちゃんの実家のような場所」で保育が受けられる横浜保育室に預け、0~2歳を過ごし、小規模の良さを実感されています。
今から25年前、荒木田副市長は横浜市戸塚区の係長時代、孤立し、子育てに迷うお母さん達を目にし、子育て支援の必要性を感じたと言います。しかし、当時は子どもに特化した局はなく、上司には、「子育てというのは、家で母親がするもの。税金を使うなんてとんでもない」と言われたそう。(いまでは想像できないそんな状況から、荒木田副市長の強い思いも通じ、こども青少年局が2006年に誕生しました。)
横浜市が様々な受け皿で待機児童対策に取り組み、「NPO法人等を活用した家庭的保育事業」が2010年開始。小規模保育の走りとなりました。そして子ども子育て新制度で、認可となった小規模保育。ここ数年高まる低年齢児ニーズの受入先として横浜市では積極的に推進しています。「3歳の壁」と言われた卒園後の受け入れ先連携園の確保もこの4年で35.2%→89%に増加。(連携園の現状には、まだ課題も残されていると、後の質疑の中で現場からの指摘がありましたが)少しづつ解消に向けて進んでいます。
荒木田副市長は、小規模だからこそ密度濃く親子に関われる。様々な支援の潜在的なニーズの発見につながる可能性を持つ事業としても注目し、今後も推進してゆく。と小規模保育に期待を込めた力強いお話でした。
会場との質疑では、現場の声が多数寄せられました。
その中で、気になる子どもについて、行政と保育所との情報共有の必要性を挙げる声がありました。重要な指摘ですが、個人情報保護が壁となり、進まない課題のひとつです。それに対し、要保護児童対策協議会のライト版というような取り組みが出来ないか。といった提案もありました。キーパーソンの広がりとネットワークの構築などを視野に、保育ソーシャルワークと共に、大きな一歩となる提案だと思いました。

左から駒崎さん、及川さん、福井さん


その後は、駒崎弘樹さん、及川敬子さん(元朝日新聞記者で「まちのLDK」代表理事)、福井渉さん(小規模保育を4箇所運営する「株式会社十色舎」代表取締役)によるパネルディスカッション。
及川さんは、元朝日新聞記者で記者時代に保育士資格取得した異色の経歴の持ち主。現在は、文京区で小規模保育園を運営されています。子育てをしながらの記者時代から小規模保育園を開演するまでの過酷な道のりを伺いました。そのまま子育て支援と小規模保育の歩みを見るようなお話でした。
また、幼少期の特定の保育者との安定した関わりが愛着形成には重要。たくさん抱っこをされ、受け止めてもらう経験が、自己肯定感を育む。という研究結果など、記者ならではの目線で、少人数で家庭に近い雰囲気で保育される小規模保育の利点が紹介されました。
私も、ただ子どもを預かってくれる保育所探しに必死になった15年前を思うと、多様な保育の受け皿が広がったことを感じます。先の荒木田副市長や、及川さんはじめ、地域の子育て先駆者たちが「必要」から生んできた事業の数々。この15年の目覚ましい変化には、強い思いと運動の成果があったことを思い、感謝の念に堪えません。
福井さんからは、小規模保育が持つ多様な保育の可能性についてのお話がありました。
十色舎では、「小規模保育×児童発達支援の併設」という横浜発の事業も展開されていますが、他にも小規模保育×〇〇=無限の広がりとなる様々な事例が紹介されました。
・ぽかぽか保育園(みやした助産院)=助産院が母体の小規模保育
・おれんじハウス・オハナ保育園=小規模保育×企業主導型
・パレット家庭的保育室なないろ(青葉区)=小規模保育×一時預かり併設型
・大場りとる・ピッピ(青葉区)=小規模保育×デイサービス
そして、2歳までは小規模保育。その後の進路は決して「3歳の壁」ではなく、ポジティブに捉えれば「その子にあった進路を考える機会である。」と、小規模保育が可能にする子どもの成長に合わせた進路形成という捉え方が、とても印象的でした。
「小規模」というキーワードは、これからの保育に様々な打開策を与えてくれると私は考えています。人と人との関係性が希薄になりつつある地域で、密に関係を築くことができる。密な関係性からは、様々な信号をキャッチできる。広く密な受け皿を、地域に多く持つことができる。
たくさんのヒントを得た今回のフォーラムを弾みに、小規模保育の更なる発展に、今後も大きな希望を持って進めていきたいです。