原発事故による健康被害について、子どもたちへの影響と支援を考える

7月19日、「福島原発事故後の子どもの甲状腺がんについて」NPO法人⒊11甲状腺がん子ども基金 専務理事 吉田由布子さんを講師に学習会が開催されました。
吉田さんらは、1990年「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワークを設立、チェルノブイリ事故の調査と支援にもあたってこられました。福島の原発事故から早7年が過ぎました。チェルノブイリでは、事故後4~5年から、子どもの甲状腺がんが増加し、放射線の影響が明らかになりました。日本では、その5年を過ぎ、どのような状況に今あるのか。現実を見つめ、考える機会となりました。
放射線の影響は、多岐にわたると言われながら、その因果関係が国際機関によって唯一認められているのが「甲状腺がん」です。「子ども・被災者支援法」ができましたが、国は抜本的な保健対策を講じておらず、継続した健康調査は、甲状腺がんに偏ります。
また、甲状腺がんの原因となるのは、放射性ヨウ素ですが、事故時、放射性ヨウ素は県境を越え広範囲に放出されました。しかし、検査の対象は、福島県に限定されています。
そんな中、甲状腺がんと診断された子どもと家族は、度重なる診察や通院費用などで経済的に困窮したり、進学や就職などの度に壁にぶつかったり、孤立している場合もあります。また再発や転移により、一生、治療と向き合わなければならないケースも出てきていると言います。
吉田さんは「⒊11甲状腺がん子ども基金設立」を設立し、県境を超えて、甲状腺がんに苦しむ人へ支援を続けています。支援を受けた人は、これまで120人。福島県が85人と多いものの、県外も1都15県に居住する35人と広範囲で、神奈川県にも6人いらっしゃいます。
福島県県民健康調査では、3巡目を終えて悪性ないし悪性疑いのある事故時18歳までの子ども達は、199人(良性1人)。当初、スクリーニングによる過剰診断とも言われましたが、2巡目以降の増加は、放射線の影響を表していると考えられます。
そんな現状でも県民健康調査検討委員会の見解は、福島での甲状腺がんの発生について「放射線の影響とは考えにくい」と発表しています。
その発表に対し、当事者アンケートからは、
「どちらかといえば、そう思わない」「そう思わない」が合わせて82%と乖離があります。

当事者アンケートから


政府や自治体に望むことは?という問いに対しては、
・将来にわたる医療費のサポート。
・調査・研究の継続。
・甲状腺を失った子供達がいることは、決して「なかったこと」にはしない、という態度を示してもらいたい。
・原発事故、そして、私たちの病気も現在進行中です。どうか風化させないで。
といった声が寄せられています。
「チェルノブイリ事故の時は、ソ連の対応を悪し様に言ってきた政府が、福島の事故では、チェルノブイリの水準のはるかに低い対応しかできていない。」
と吉田さん。
これからもまだ原発事故の被害は続きます。
7年目の今、現実を受け止め、風化ではなく、改善を!
3.11甲状腺がん子ども基金