広島視察報告3・4 ー八天堂ファームー/ー広島県のプラごみ対策ー

③ 八天堂ファーム (農福連携)

八天堂ファームは、クリームパンで有名な「八天堂」のグループ内ベンチャーとして誕生しました。
後継者不在により約1年間遊休化していた農地を活用し、ぶどう栽培と農福連携を組み合わせた取組を進めています。約80haの圃場で10品種を栽培し、シャインマスカットやピオーネ、藤稔などを生産しています。余談ですが、シャインマスカットは広島県の農研機構で生まれた品種なのだそうです。

降水量が少ない地域で灌水設備がない中、イノシシ、シカ、アナグマ、カラスなどによる獣害にも直面しています。一方で、収穫量の約3分の1を占める規格外品はジャムに加工し、八天堂のクリームパンの原材料として活用することで収益化を実現し、黒字経営につなげています。2025年の収量は約6.5トンを見込んでいます。

八天堂ファーム代表取締役の林さん(右)と宗越福祉会の伊藤さん

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八天堂ファームの大きな特徴が農福連携です。生活困窮者や発達障害のある人、ひきこもり状態にある人など、複合的な課題を抱える人の就労支援に社会福祉法人宗越福祉会と共に取り組み、特別支援学校の生徒や市の担当者とも連携しています。農作業を通じて就労意識が高まる例もあり、農福連携アワードや「村の宝」に選ばれるなど、評価を受けています。

 

2022年に設立された農福連携のグループ内ベンチャーとして、広島県内の自治体や法人と連携する「農福コンソーシアムひろしま」に参画。将来的な耕作者不在農地の増加を見据え、農業と福祉をつなぐ新たな可能性を示しています。

 

④ ACTION FOR ZERO ひろしま
〜海洋プラスチックごみ流出ゼロを目指して〜

広島県では、海洋プラスチックごみの流出ゼロを目指し、「ACTION FOR ZERO ひろしま」を掲げた取組を進めています。今回、環境県民局環境保全課の秋山課長、樽谷主査より、瀬戸内海の現状と対策について説明を受けました。

地球温暖化による海水温の上昇は、牡蠣の大量死を引き起こすなど、瀬戸内海の生態系や漁業に深刻な影響を及ぼしています。加えて、牡蠣いかだなど漁業活動にプラスチック資材が使われていることも課題となっています。広島県沿岸では、令和6年度に約11トンのごみが漂着し、その約9割がプラスチックでした。

県は「2050 輝くGREEN SEA 瀬戸内ひろしま宣言」を掲げ、漁業由来ごみと生活由来ごみの双方に対し、関係団体や企業、行政が連携して対策を進めています。その中核となるのが、令和3年に設立された「GREEN SEA 瀬戸内ひろしまプラットフォーム(GSHIP)」で、県内23市町すべてを含む146の企業・団体が参加しています。

取組は、①使用量削減、②流出防止、③清掃・回収、④情報の共有と発信の4本柱です。生分解性プラスチックや水平リサイクル、サトウキビの搾りかすを活用した容器の実証、スマートごみ箱の設置など、実践的な取組が進められています。また、清掃活動や「プロギング」など、楽しみながら参加できる啓発活動も行われています。

さらに、広島県は近隣県とともに「瀬戸内オーシャンズX」を立ち上げ、カキ養殖用フロートの長寿命化やICタグによる管理など、発生抑制にも取り組んでいます。県境を越えて流出するごみの問題に対し、広域連携で対応している点が印象的でした。

お話を聞いた広島県議会。外観もスタイリッシュ!