神奈川で起きていること ― PFASを知る学習会を開催しました

5月8日、持続可能な環境をつくる政策・制度研究会「PFASプロジェクト」で、「神奈川で起きていること ― PFASを知る学習会」を開催しました。
講師に環境問題の第一線で活動されている 植田武智さん をお迎えし、PFASの基礎から最新の規制動向、私たちの暮らしへの影響まで学びました。

植田武智さん(科学ジャーナリスト/食の安全・監視市民委員会)

PFASとは何か ―「永遠の化学物質」

PFAS(有機フッ素化合物)は、水や油を弾く性質から、長年さまざまな製品に使われてきました。
しかし、分解されにくく、体内や環境に蓄積するという特徴があります。

  • 水に溶けやすく、拡散する
  • 炭素鎖が長いほど体内に残りやすい
  • 半減期(体内から半分になるまでの時間)
    • PFOS:約5.4年
    • PFOA:約3.8年
    • PFHxS:約8.5年

現在、PFOS・PFOA・PFHxSは国際条約で禁止されていますが、永遠の化学物質と呼ばれるPFASは、分解されないため、過去の使用による汚染が今も残留しています。
そして、更には、規制されていない別のPFASによって、新たな汚染が現在も進行中です。

神奈川・国内で起きている汚染

原因として考えられるものには、

  • 工場排水
  • 泡消火剤(基地等)
  • 廃棄物処分場

などがあります。国内で原因が特定されているものには、岡山県吉備中央町の使用済み活性炭による大規模汚染。自衛隊基地(千葉県・下総)による汚染などで、地下水から高濃度検出(約14,000ng/L)ケース。県内では、横須賀、厚木基地からの泡消火薬剤の流出事故などがありますが、こちらは、限りなく汚染源でありながら、補償がされているわけではありません。沖縄の基地のケースなどでも、ほぼ原因が特定されていながら、莫大な対策費用を自治体が負担するケースも生じており、日米地位協定のがこんなところでも暗い影を落としています。

健康への影響

PFASはさまざまな健康影響との関連が指摘されています。

  • 甲状腺疾患
  • 免疫機能の低下
  • コレステロール値の上昇
  • 肝疾患
  • 腎臓がん・精巣がん
  • 低出生体重・発育遅延

血中濃度が上がると発がんリスクが上昇するという研究も紹介されました。

食品・水・暮らしの中のPFAS

PFASは水だけでなく、食品からの摂取も重要な問題です。

  • 魚介類(特に淡水魚)に多く蓄積 (アユ:76000ngというケースも)
  • 肉・卵・牛乳からも検出
  • 中国産アサリの缶詰で高濃度検出(国産の約10倍の例)

また、地下水が汚染された地域では、井戸水を飲んでいなくても、
野菜を通じて体内濃度が高くなるケースも報告されています。

日本においては、食品から検出された場合にも規制されたケースはありません。指標値としてTDI(耐容一日摂取量)がPFOS・PFOAそれぞれ 20ng/kg 体重/日と設定されていますが、年間のうちにその食品を摂取する目安の値をかけることでほとんどの食品がこの指標値を下回ることになります。(これが分かりにくいし、本当に不誠実だと私は感じるのです)

家庭用品にも広がるPFAS

私たちの身近な製品にもPFASは使われています。

  • フッ素樹脂加工のフライパン
  • ファストフードの包装紙
  • 化粧品(「〜フルオロ」表記)
  • デンタルフロス(PTFE)
  • 学生服(防汚加工)
  • メガネの曇り止め

特に家庭用品は高濃度で含まれるものも多く、吸入による曝露も懸念されています。
逆に、「PFASフリー」の表記も広がっています。選べるようになったことは、一歩前進でしょうか。
学習会の帰りに寄ったスーパーで、コンロの網の上に敷くことでフライパン代わりになるというBBQの便利グッズに「〜フルオロ」表記を発見。これは、ちょっと心配です。

日本の規制の現状と課題

日本では今年4月からようやく水道水質基準が設定されました。しかし、この基準も世界水準からみれば、高過ぎると言わざるを得ません。また、環境基準が設定されていないため、公共用水(地下水や河川水)は野放し状態です。環境基準化については、私も議会でその必要性について指摘をしてきました。神奈川県は国に速やかな設定を要望していますが、実現は、通常のプロセスであれば水質基準化から2年程度かかると言われています。(遅過ぎる・・・)

欧州では、すべてのPFASを対象とした規制が進んでいます。アメリカにおいては、基準値が限りなくゼロという厳しい規制が取られています。

今後に向けて必要な対策

植田さんからは、次のような提案が示されました。

  • すべてのPFASを対象とした規制
  • 水質「目標」ではなく法的な基準化
  • 食品のPFAS基準の策定
  • 製造・使用・廃棄まで一体的な管理
  • 家庭用品・化粧品・食品容器の規制
  • 汚染地域の特定と浄化
  • 住民の血液検査と健康影響のフォロー

PFAS問題は、特定の地域や水だけの問題ではなく、
私たちの暮らし全体に広がる課題であることを改めて認識しました。

神奈川においても、
「知らないうちに曝露している」現実に向き合い、
制度の見直しと情報公開を求めていくことが重要です。PFASプロジェクトでは、ちっとも進まない水以外の汚染状況に関する調査に対して声をあげていきたいと考えています。

今後も、こうした学びを共有しながら、市民の立場から解決に向けた一歩を探っていきます。ご注目ください。

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