視察報告 越後妻有アートトリエンナーレ

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キナーレ


2016年7月20日から、市民・文化観光・消防委員会の行政視察で、新潟を訪れました。
1日目、 初日は、新幹線で越後湯沢へ。そこからバスに揺られて十日町市を訪れました。
十日町市は、横浜市より広い590㎢の面積に55000人が暮らす広くて小さな市ですが、視察目的は、この過疎高齢化が進む越後妻有(えちごつまり)と呼ばれるこの地域で2000年から開催されている広大なアートプロジェクトにあります。
『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』は、越後妻有(十日町市と津南町)の広大な里山760㎢を舞台に3年に一度開催される世界最大規模の芸術祭で、昨年2015年は6回目の開催、378作品の展示を見ようと51万人もの人がこの芸術祭を訪れました。その経済波及効果は昨年は50億8900万円。2000年初0720kinare2年度は、施設整備などのハード事業が多かったこともあり100億5400万円。まちづくりの起爆となって、地域の起業にも繋がっているという話もありました。また、「こへび隊」と呼ばれる都市部の若者が芸術祭を作り支え、地域との交流を生み出しています。しかしながら、人口減少の大きな歯止めとはなっていないようで課題も見えました。
視察では、芸術祭開催年以外でも観覧することができる施設を巡りました。
まず訪れたのはアートトリエンナーレのメインステージである『越後妻有里山現代美術館[キナーレ]』中央の人口湖を回廊が囲むモダンで美しい美術館。
この土地を題材に、親しみやすい様々な現代アートが展示されていました。中には体験型のものもあり、年齢問わず楽しめる内容となっていました。
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うぶすなの家


続いて美しい山々の景色を眺めながらバスに揺られること30分。山深い集落の中にあるのが、『うぶすなの家』茅葺屋根のそれだけで文化遺産のような古く存在感のある佇まいの民家。
1924年に建てられた古民家は、2004年の中越地震で空き家となった。2006年のトリエンナーレ開催の際に、中越地震の義援金で改築され、著名な陶芸家の作品が愉しめ、またレストラン、宿泊も可能な拠点となっている。5軒しかない集落で、地域の人、時には里から人を呼んで、運営をしているそうです。
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絵本と木の実の美術館


最後は、『絵本と木の実の美術館』
ここは、その名のとおり「鉢」という名の山に囲まれた集落で、2005年廃校となった小学校が、絵本作家・田島征三と集落の人々の手によって、空間絵本という形の美術館になりました。
閉校時に最後の児童となった3人が主役の物語が立体で表現され、絵本の世界へ迷い込んだような心地よい錯覚に陥ります。
自然の木や木の実を使ったアートが展示され、教室を抜けるごとに立体で、絵本の世界が展開されていきます。日常(学校)の中で非日常が見事に再現され、感動をおぼえました。
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大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレでは、作品群が点在しているため、作品から作品を観覧するまでの移動がかなりかかりますが、大自然の中、その移動する際の風景も作品の一部。と広大な敷地全体をアートと捉えています。全体のコンセプトは「人間は自然に内包される」本当に、作品以上に里山そのものがアートだと気づかされる美しい風景がありました。0720hekiga
この越後妻有の大自然の中の芸術祭と横浜という都市の中のトリエンナーレは、まったく違う趣のものではあります。
が、「人間は自然に内包される」といった全体のコンセプトは、世界共通の概念があり、0720senro「自然」を「まち」に置き換えることで、横浜でも同様に「まち」全体をアートと捉えた試みならできるかもしれない。と可能性を感じました。
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