子どもたちの課題に向き合い寄り添う。川崎市ふれあい館

9月13日の夕刻、桜本保育園の大きな部屋には、子ども達の声があふれていました。川崎市ふれあい館 鈴木健さんの周りには、大きな子も小さな子も、軽口をたたきながら、笑顔で集まります。多い時には、200人を超える利用があるこども食堂です。
「あの子はね、何年も引きこもっていたんだけど・・・」
「この子のお母さんは、フィリピンの人」
外国籍や外国にルーツを持つ人が数多く暮らす桜本。子ども文化センターやこども食堂に集まる子ども達には、複雑な課題を抱えた子も多くいます。その真ん中に「ふれあい館」は、30年、居場所を構えてきました。

ふれあい館の階段。8ヶ国語でお出迎え


地域で居場所を続けていると、貧困の連鎖は、経済的な理由よりも「生きづらさ」の連鎖であることに気づく、と鈴木健さんは言います。子ども時代の「生きるしんどさ」を抱えたまま大人になり、それが次世代に継がれてしまう。
だからこそ、年齢で区切るのではなく、育ちの全ての世代に向けた居場所が、地域の外へ羽ばたくことが出来ない子ども達を支え合い、さらに様々な事業・機関が有機的に繋がり合う長期的な支援が必要になります。
現在の社会では、子育ても教育も成果を求められます。子どもの進学率、学習成果、満足度・・・これらが数値化され、目標が設定されます。
例えば、「横浜市子どもの貧困対策に関する計画」でさえも目標値が設定されています。
 ○「自分には良いところがある」と答える子どもの割合 
 現状値は、小学生74.2%、中学生64.2%
 目標値は、小学生75%以上、中学生65%以上
と設定されています。

鈴木健さん


しかし、鈴木さんは、子ども達を成果の対象とする社会にはしたくない。と言います。
「支援をして、こんな成果がありました」を求めていては、一人ひとりに寄り添うことは出来ません。「たとえ、うまくいかなくても、輝かしい将来を求めるよりも、それなりに地域で生きてゆく。あわよくば、生きる意義を感じてほしい。」という言葉が、心に残っています。
そんなあたたかい地域づくりを。子どもの居場所がハブとなり、町そのものを育てていく、まちづくりにつながる姿をここでは見ることができます。
地域の単位が広くなり、関係性が希薄になっている昨今。つまづいてもやり直せる場所であるために、居場所や、信号をキャッチできる場の必要性は高まっています。