市民の手に政治をとりもどす

2月7日横浜未来アクション主催で、「大事なことは市民・地域が決めたい〜横浜の未来に希望をつくる〜」と題し、千葉大学名誉教授で政治学者の新藤宗幸先生にお話を伺いました。

住民投票の条例案が審議された市会臨時議会からひと月。
市民の手に政治をとり戻すための「これから」を考える機会としようと多くの参加がありました。
新藤先生の講演に先立ち、直接請求から条例案の否決までの流れを私から駆け足ではありましたが、ふりかえったのですが、報告しながら、再びふつふつと怒りが湧き上がるのを感じました。

当日は、都内のスタジオからzoom配信でした!

「代議制民主主義の機能不全と住民投票」

新藤先生のお話は、そもそも代議制民主主義とは、「信託」であって「委任」ではない。
というところから本題が始まりました。全て委ねるのが「委任」である一方、「信託」とは最終的な権利は、市民の側にある。つまりはいつでも解約することができることが基本です。
「このことを私たちは毎日言い続けなければならないのだ。」と新藤先生。
それは同時に、「きちんとやってるかな?私たちの議員は、市長は?」と日々向き合うことをも意味するのだと思います。
だからこそ、透明性の確保が「信託」の必要条件となるわけです。
向き合うことは、当たり前のようで、難しい。
私たちはこの責任を充分果たしてきたのだろうか?という反省もよぎりました。

反省は他にもあります。

自治体においては、市長と議会は対等な二元代表制がとられていますが、
「自治体の二元代表制は、議員内閣制のカーボンコピー」に成り下がっている。と、新藤先生。

たしかに…

横浜市会にも、議会の中に与党と呼べる会派が過半数を占めて存在しています。二元代表制のもと、市長と議会が牽制し、政策形成を高めるべきが本来の自治体政治ですが、現実は、国政の影響を色濃く受け、市長と与党はまるで一体。新藤先生の言うところの「お供物(=票)ご利益政治(=利益誘導)」が存在し続けている現実を、私たちは許してきてしまった。

 

自治基本条例、議会基本条例はファッションか

住民投票条例案の本請求の際、地元議員への面談を申し込んだ市民が、反対派であることを理由に断られた。という事例がありました。
(ちなみにその人は、賛成とも反対とも議員に伝えていません。)

横浜市には、議員自ら作った議会基本条例がありますが、そこで高らかにうたわれている「あるべき姿」とは、かけ離れた現実にショックを受けた出来事です。
まさに、お飾りだったのか、「横浜市議会基本条例」(議会基本条例と直接請求についてはこちらでも触れています)

(ちなみに、常設の住民投票制度を持っている自治体の多くが自治基本条例にこれを定めています。横浜市には「横浜市地域まちづくり推進条例」がありますが、もちろん住民投票には触れられていません。)

 

政治はお金がかかる!
市長は、市長意見の中で、住民投票のコストを問題にしましたが、
新藤先生はむしろ「安上がりにしては、ろくなことがない。」とおっしゃいます。
その、最たるものが、政治が「自助」を言い出したことだと。政治が「自助」を求めるということは、自ら政治の役割を放棄したも同然です。

新藤先生と司会の三浦さん
私は、事務局らしく控えております。

住民投票がしたいと言っただけなのに・・・
私たちが直接請求で求めたのは、カジノの住民投票でしたが、直接請求に至った原因は、市民の意思と、市民が信託した市長と議会の方向が解離してしまったことにありました。つまり、代議制(間接)民主主義の機能不全です。

「これまでの議会の議論を棚上げにする。」
と言ったのは市長でしたが、「住民投票をしたい」とわざわざ直接請求した市民の声を否定するのは、まさにこれまでの「お供物ご利益政治」が否定されるから?なのかもしれません。

アメリカでは住民投票はもっと身近で、7割の地域で、債券発行に対しても住民投票を実施しているという話には驚きましたが、対して日本の民主主義は、市民参加があまりにも制限されています。

会の後半、「区民投票を成功させる会」事務局長、品川・生活者ネット 井上八重子さんからも報告をいただきました。
昨年の夏には、いばらき県民投票の直接請求の話を聞く機会がありましたが、私たちの直接請求とタイミングをほぼ同じくして、品川では、羽田新飛行ルート運用の賛否を問う区民投票条例制定を求める直接請求が行われていました。
法定数の3倍の署名を集めたこと。やはり市長与党の議会に否決されたこと。本当に横浜と重なります。
市民が立ち上がり、代議制民主主義の機能不全を訴える運動が各地で展開されていたという偶然(必然)の一致がみられたとも言えるこの一年。制限される民主主義にいよいよ市民が声を上げ始めたのです。
各地で、市民参加が政治に求められている今、この気運の高まりを捉えて、市民の手に政治をとり戻す次の一歩を踏み出したい。
新藤先生に叱咤激励、背中を押される思いでした。

私たちは、まだ諦めません。