すべての食品にトレーサビリティを! 法制化に向けて

発行された小冊子。私はデザインを担当しました。美しい切り絵でわかりやすく解説されています。

6月11日、たねと食とひと@フォーラム主催 オンライン学習会「すべての食品にトレーサビリティを〜法制化の必要性〜」が開催されました。同タイトルのミニ冊子の発行を記念して行われ、トレーサビリティの法制化へのアクションの足がかりとなることを期待しての学習会でした。

食品トレーサビリティは「食品の移動を把握すること」と定義されますが、即ちその食品の加工・流通過程を追跡することです。食の安全を守り、万が一の事故に備える仕組みであり、また遺伝子組み換え作物・ゲノム編集食品や有機農産物の表示を記録に基づいて証明することにも寄与すると期待されています。EU、アメリカ、中国などでは既に食品全般への基礎的なトレーサビリティが義務付けられています。しかし、日本では大きな事故が起きないと法制化への議論が高まらず、米偽装や牛肉偽装の大きな事故が起きると、その特定の食品のみに法規制をかけるという場当たり的な対策が取られてきています。

学習会は、前段では、(一社)食品需給研究センター理事 酒井純さんの講演。
後段は、石井食品株式会社執行役員 池田明子さん、
生活クラブ連合会 三木祥子さん、
パルシステム生活協同組合連合会 常務執行役員 高橋宏通さんを加えたパネルディスカッションという構成で行われ、私は、コーディネーターを務めました。

(一社)食品需給研究センター 酒井純さん

酒井さんのお話では、食品需給センターの調査により、日本の食品事業者の現状は、99%以上がすでに基礎的なトレーサビリティが確保されていることが明らかとなり、法制化の影響は限定的だということでした。トレーサビリティで、事故が防げるとは言えないまでも、記録の義務は、事件を予防し、事故の拡大を防止することにつながることが期待されます。これまで起きた乳製品の集団食中毒、未だ原因不明のO-157の集団食中毒などなど多くの食品事故は、トレーサビリティー制度があったら、いち早く収束したであろうと思うと残念です。

石井食品株式会社 池田明子さん

石井食品の池田さんからは、より高度なトレーサビリティを自主的に実践している企業として、この決断に至った経緯や現在の仕組みを紹介いただきました。石井食品のトレーサビリティは、顧客に正しく製品情報を伝える目的を達成する上で必要とされたものだったとのこと。ホームページで私たち消費者自身で製品の履歴情報を全て見ることができる仕組みになっています。
石井食品では、家庭で使わないものは、一切使用していない。というのには驚きました。確かに石井のミートボールの裏面の原材料表示に並んでいるのは、台所にあるものばかり。シンプルなこのこだわりを貫く姿勢には感動しました。こうして正直にあらゆる情報を包み隠さず提示することは、会社の更には社員一人ひとりの自信にもつながっているというお話にも納得です。

生活クラブ 三木祥子さん

生活協同組合では、組合員によりさまざまな情報公開が求められます。その中でも特に厳格に独自の基準を持ち、消費材の安心安全確保に努めてきた生活クラブ。
生活クラブの三木さんから、その取り組みを伺いました。私も組合員の一人、当然のこととして享受してきたこの食の安全ですが、独自の取り組みの中でどのように証明し、担保しているのか、改めて伺うと、結構大変!組合員としても、こうした裏の取り組みまで知っておくことも大切ですね。
生活クラブのトレーサビリティは、家畜飼料にまで及びます。NON-GMトウモロコシを得るためには、どうしても輸入に頼らざるを得ないことから、アメリカの種子会社と契約を結び、厳格にトレーサビリティを行っています。こうして飼料まで遡る仕組みを構築することでNON-GM消費材を確立しています。
石井食品が、原材料表示にわからないものを使用せず、原材料表示をスマート化した。という逆の発想で、生活クラブでは、細かく表示することで透明性を確保しています。材料のそのまた材料(調味料の材料など)まで表示しているので、裏面は小さな文字で埋め尽くされます。面白い!

パルシステム 高橋宏通さん

パルシステムの高橋さんからは、トレーサビリティの制度化への課題もいただきました。
食の安全には、商品の危害リスクの排除が前提であり、トレーサビリティはあくまで目的ではなく手段。決して、トレーサビリティが食の安全をもたらすわけではない。というのはその通りです。そして、私たちは、この議論においてもトレースバック(生産者側に遡る)のことについてのみが語られることが多いですが、トレースフォーワード(消費者側のどこに届いたか)を忘れてはいけない。ということ。誰のための制度にするのかといえば、それは消費者が置き去りになってはいけないというご指摘をいただきました。そして、消費者自身も「選ぶ力」をつけることが、食品の安全には必要だと言うこと。消費者が選ばなければ、商品は作られない。
「消費者の賢い選択は世の中を変える力」なんだという言葉は、忘れずにいたいと思います。
そのためにも正しい選択を可能にする食品表示制度はやっぱり必須。それを実現するためのトレーサビリティの法制化でもあります。

すべての食品に基礎的なトレーサビリティを。その法制化へ向けて、市民から必要性を訴える声を大きくしていきたい。とはいえ、何か危険に直結するようなことでもなく、テーマとしてはなかなか地味なんですよね・・・こういうことに向き合う国会議員の数を増やしていきたいな。。。なんてことを終了後にメンバーと愚痴ってしまうのでした。

諦めずに、冊子を片手にこれからも訴えていきたいと思います。

ミニ冊子について詳しくはこちら