広島視察報告1ー北広島町鳥獣対策ーせとだレモンー
去る11月12日から14日にかけて、環境農政常任委員会で広島県へ視察に行きましたので、2回に分けて報告します。
① 北広島町 (鳥獣対策・森林・ジビエ)
広島県北広島町は、2005年に4町が合併して誕生し、町域の約8割を森林が占める中山間地域です。神楽や壬生の花田植などの文化を受け継ぎ、水・米・そばの産地としても知られています。
今回、町議会の伊藤議員、農林課の宮地課長、反田林業振興係のご説明を受け、森林管理と鳥獣対策、ジビエ活用の取組について視察しました。
北広島町では、担い手不足や森林所有者不明、森林と人家の距離が近いことなどを背景に、鳥獣被害が深刻化しています。かつて薪炭林が担っていた人里と奥山の緩衝機能が失われ、現在は柵なしでの農業が困難な状況です。一方で、「すべての鳥獣が悪いわけではない」という考えのもと、環境管理と被害対策を組み合わせた取組が進められています。
具体的には、緩衝帯の整備、生息環境管理、トタン柵や電気柵による被害防除、箱わな・くくり罠による個体数調整を実施し、捕獲報告のスマホ化や報奨金の見直しにより、担い手の負担軽減を図っています。
また、「きたひろジビエコンソーシアム」を立ち上げ、鳥獣対策専門チーム(通称:tegos)と連携しながら、ジビエの利活用にも取り組んでいます。民間の食肉処理施設を活用し、安全管理やトレーサビリティを徹底したうえで、「食べるために捕獲する」仕組みづくりを進めています。ジビエは臭いというイメージを払拭し、品質管理、安定供給、販路開拓を分業で担う体制が特徴です。
ジビエを万能策とするのではなく、鳥獣対策の一つの選択肢として位置づけ、教育・研究機関とも連携しながら、地域に合った持続可能な仕組みづくりが進められている点が印象的でした。
② せとだエコレモン
広島県尾道市・生口島は、平均気温15.5度と温暖で、柑橘栽培に適した地域です。明治期からレモン栽培が行われ、現在は国産レモンの生産量日本一を誇ります。
1964年の輸入レモン自由化により一時は産地が衰退しましたが、1970年代に輸入レモンのポストハーベスト農薬の問題が明らかになったことを契機に、国産レモンが見直されました。こうした背景のもと、「皮まで食べられるレモン」をコンセプトに生まれたのが「せとだエコレモン」です。
せとだエコレモンは、減農薬を基本とした栽培で、葉まで香る品質が特徴です。一方で、台風による病気の蔓延や、暑さ・降雨の影響など、自然条件との向き合いは欠かせません。特別栽培を基本としながら、必要に応じて農薬を使用し、再び減農薬に戻すなど、現実的な栽培管理が行われています。
収穫時期に幅を持たせられる反面、全体の約3割は生果として出荷できず、加工用として活用されています。メーカーと連携し、売れる商品を「せとだレモン」でつくることで、付加価値を高め、産地全体を支える仕組みが築かれています。
有機・無農薬を目的化するのではなく、「産地を守ること」を第一に、広島県やレモン協議会とも連携しながらブランディングを推進。スターレモン、ハートレモンなど、遊び心ある取組も展開されています。
農業はロマンがあり、生涯続けられる仕事であること、そして「レモン農家はかっこいい」というメッセージが、次世代の担い手につながっている点が印象的でした。


