子どもたちの止まり木 Kiitos(キートス)

スペースナナの連続講座「地域でゆるやかに支え合う場をつくろう」
第一回は、子どもたちの止まり木 Kiitos(キートス)
調布市にある「青少年の居場所Kiitos」を運営する白旗眞生さんにお話を伺いました。
「Kiitos」はフィンランド語で「ありがとう」を意味するそうです。不登校、家庭不和や虐待などの問題を抱える子どもたち、障がいを持つ子など様々な子どもたちがKiitosを訪れます。
かつて児童館で相談員等をしていた白旗さんが気になった、児童館を利用出来なくなった18歳を超えた子ども達の「その後」。様々な公的支援は途切れるが、18歳という年齢では、携帯電話の契約や住宅の契約など、多くのことが保護者の同意が必要になるのが現実です。その18歳を超えた子ども達に「家」のような場所をつくろうと「Kiitos」が誕生しました。
何をすることもない、ただ居るだけでいい場所。子ども達はそれぞれ自由に好きなようにKiitosでの時間を過ごし、温かい食事を皆で一緒に食べ、夜には自宅へ帰っていきます。
帰る時に、思わず「行ってきます」と言って帰る子。
このエピソードが象徴するのは、「家」は=「親」じゃなくても成り立つ。ということではないでしょうか?
気になったのは、行政の支援は?という点。白旗さんは、行政の事業になってしまうと「狭間(はざま)の支援」が出来なくから、もしも行政からの委託の依頼があっても断る。と強く仰っていました。柔軟な対応が出来ない、規制やルールに縛られた「公的な支援」の課題を改めてぶつけられたように感じました。
白旗さんのお話の後は、参加者が意見を共有するグループトークの時間がありました。
参加者も子どもの支援に携わる人が多く、非常に濃い内容で、時間が全然足りない!
そこから出てきた意見や感想から、更に引き出された白旗さんのお話が印象に残っています。
子どもの困りごとは、やはり「親」から。という考えの元に、家庭や親との関わりや親への支援の必要性が語られることが多くありますが、会場からも親への支援はどうしているのか?と質問がありました。
それに対し、白旗さんは「親に会うことはしないようにしている」との答え。なぜならKiitosの支援は「子どもへの支援」だから。
Kiitosに来る子の中には、親に秘密に来る子もいる。子どもを尊重したいのだ。と言う言葉に、強い芯を感じました。
いつか、ここに来る子の中から運営に携わる子が出てくるようなことがあるのではないか?と勝手な幻想を抱いた私たちには、「子ども達には、過去をフラッシュバックする場にいないで、堂々と世の中に出て行って欲しい」とおっしゃいました。
Kiitosは、止まり木だから、いつかは飛び立つんですね。
子どもの貧困問題。いじめの問題。虐待・・・
社会で子どもたちが、安穏に過ごすことが難しくなっている中にあっても、
全ての子どもたちに、未来は開かれていることを、白旗さんは示してくれているように感じました。