カジノ誘致は、エビデンスに欠けた政策決定だった

12月3日は、市民フォーラムの第12回講演会でした。
カジノ誘致という一大事が横浜にふりかかってから、誘致撤回に向け、私たちは多くの団体と連携を続けてきました。この「カジノを考える市民フォーラム」(*)も横浜未来アクションが構成団体に加わり、この間共に取り組んできたところです。


横浜市においては、カジノ誘致問題に終止符を打つかのように「横浜IR誘致に係る取組の振り返り」報告書が出されました。この報告書には6人の外部有識者による考察が掲載されていますが、その有識者のお一人が、この日の講師 幸田雅治神奈川大学教授です。

エビデンスに欠けた横浜市の政策決定

幸田先生は、EBPM(エビデンス(証拠)に基づいた政策決定のあり方)という観点から検証をされています。
経済的効果、依存症対策、どれをとってもエビデンスに欠けた横浜市の主張。情報公開、市民への説明においても課題があったとしています。
また、「what if(もし条件が変わったら…)」の検討が重要と指摘をされていますが、コロナウィルスの感染拡大という要素など、見直すタイミングは確かにたくさんありました。

横浜市政に求めることは、政策形成にあたってエビデンスを明らかにするとともに、健全性、透明性、真実性,誠実性をもって、市民に正面から向き合って論拠を説明していくように取り組んでほしい。と締めくくられました。

幸田雅治さん(神奈川大学法学部教授)は、オンラインで参加。

横浜につづけ!全国の誘致自治体の今は?

そして、第二部として、この間私たちの運動を専門性を持って、学術的に側面から支えてくれた鳥畑与一静岡大学教授に今のカジノIRの動向をお話しいただきました。
国会の質疑では、区域整備計画の認定申請を経た大阪のIR計画が認定を求めています。その中で、シンガポールでは、すでにカジノ収益がコロナ前の水準を上回っている。といった内容もありました。しかし、実態は、カジノの客が戻っているわけではなく、一人当たりのカジノの負け額が増えているのだと鳥畑先生。大阪のIRを計画されている夢洲は、地盤沈下の問題を抱えており、すんなり進む気配はありません。
また、長崎では、そもそも資金調達計画が破綻している状況とのこと。世界的にはオンラインカジノの台頭と急速な普及もあり、日本のカジノ計画は暗礁に乗り上げようとしているのではないでしょうか。

一方で、「カジノを作る前に依存症になってしまった横浜市・・・」と鳥畑先生は揶揄しましたが、反省が全くない報告書からも覗く、まだチャンスがあればやりかねない横浜市の姿勢は、本当に今後も注意が必要かもしれません。
この問題で日本中を駆け回る鳥畑先生。カジノ推進自治体における市民運動は「横浜につづけ!」を合言葉に行われており、横浜市の市民の取り組みが、全国の励ましになったと嬉しい言葉もありました。

横浜のカジノは、市長選で止まったけれど、「市民自治を目指す」というもうひとつの大きな課題は残されています。山下ふ頭の再整備計画や、この課題に限らない多くの諸課題の政策決定のプロセスをカジノIR誘致の失敗に学び、見直していくべきです。

講演会の模様は、後日Youtube配信の予定です。

鳥畑与一先生(静岡大学教授)

*カジノを考える市民フォーラム・・・一般社団法人 勁草塾、横浜地方自治研究センター、生活クラブ運動グループ・横浜未来アクションの3団体で構成される