障害福祉から考える社会保障のこれから

3月30日、ネット・青葉事務所とオンラインで、学習会を開催しました。

講師にお呼びした又村あおいさんは、平塚市役所に長らく勤務し、厚労省に出向するなど制度の中核を知る立場であり、今は一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会事務局長を務め、厚労省の検討会委員など障害者の権利擁護の活動や政策提案を行なっています。

今年は、児童福祉法と障害者総合支援法の改正の年。ポイントをお話しいただきました。

又村あおいさん

児童福祉法改正

児童福祉法改正では、児童発達支援センター(横浜では地域療育センター)が地域における中核的役割を担うことが明確化されます。中核的役割には、地域の障害児通所支援事業所に対するスーパーバイズコンサルテーション機能(支援内容等の助言・援助)といった学齢期の支援が含まれており、現状では、学齢期の支援を行なっていない療育センターが、この役割を果たせるのかが大きな課題です。また、広い横浜市で、現状の地域療育センターで数的に足りるのか?という問題もあります。

また、障害者の保護者も75%が共働きとのこと。児童発達支援や放課後等デイサービスにおける保護者の就労支援をどう考えるか。という課題は、障害の枠を超えた社会的な大きな問題です。又村さんは、一般子育てサービスによる保護者就労支援を進めるのなら、十分な選択肢と利用調整(相談支援)の仕組み構築は不可欠と指摘します。

さらに、18歳を過ぎれば、放課後等デイサービスと違い、生活介護は19時まで見る仕組みになっておらず、学齢期後の夕方支援の問題は、ますます大きくなると、私たちも指摘してきたところです。実際に、18歳で入所を望む人が多く、障害者の地域移行という方向性とは逆行する現状があります。

障害者総合支援法改正

障害者総合支援法改正では、グループホームの支援内容に、居宅における自立した日常生活への移行支援が追加されました。いわゆるグループホームからの卒業支援です。とはいえ、住まいをはじめ地域の資源は整っているとは言い難い状況です。これまでGHの整備に主眼を置いてきた方向から、障害者の地域生活支援体制を根本から見直す必要があるというわけです。

報酬改定

2024年は、医療・介護・障害福祉の3つの報酬が同時に改定される、6年に1度のトリプル改定の年です。介護同様に処遇改善加算の一本化、業務継続計画(BCP)の策定義務など予定されています。介護の報酬改定では、訪問介護の報酬が引き下げとなることについて私たちも警鐘を鳴らしてきたところですが、この問題は、障害福祉でも大きな影響があると又村さんは、指摘されています。訪問介護のヘルパーさんは、介護だけでなく、障害者のケアや子育て支援のヘルパーも同時に担っていることが非常に多く、基盤となる介護報酬が引き下げられるということは、地域の福祉に大きな影を落とすことになるのです。地域移行という国の方向性に逆行する改定であることは間違いありません。

 

今回の法改正・報酬改定で見えるもの

又村さんは、「国としては、法律やサービスの整備は完成に近づいており、市町村がしっかり体制構築すべし」と匂わせている部分が多く、これからは市町村の取り組みが大きく問われると指摘しています。

また、報酬改定はあくまで個別給付でありいわばケースワーク、地域の支援体制構築には、基本的に予算事業で展開する=ソーシャルワークが必要だ。というお話に、これからの政策提案の糸口を感じました。