住まいと暮らしの一体支援

奥田知志さんのお話には、いつも心が揺さぶられます。

11月11日オルタナティブ生活館にて、「くらしを変えるVision講座」が開催されました。
第1部では、居住支援の現状と自治体政策の課題をNPO法人抱樸理事長の奥田知志さんから
第2部では、座間市における居住支援の取り組みを座間市生活援護課 林星一課長から伺いました。

居住支援とは、名前の通り「住まい」の支援を指しますが、生活困窮者や高齢者等の住宅確保に向けて
2017年10月から住宅セーフティネット法(住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅供給の促進に関する法律)が改正施行されました。

住まい(現住所)がない。ということは、社会的手続きができなくなるということに直面します。
先日の台風時にホームレスが避難所に入れなかった事例が紹介されました。
避難所に入れない理由は、「住民としての登録がないから」というものでした。
(実際には、外国人や旅行者などを受け入れていた事例は多くあります。)
このことで、避難所が、多様な人を受け入れる体制にあったのか、という災害時の課題を引き出したと同時に、
住まい(現住所)がない。ということの大きな意味を表しています。
それは、社会的危機であり、絆の危機であり、生命の危機になる。と奥田さんはおっしゃいます。

その住宅の確保に、制度が動いた。ということは、画期的なことであり、施行当初から大きな期待が寄せられていました。

住宅セーフティネット制度は、
1、高齢者や障がい者、低所得者などに対し、入居を「断らない」住宅の登録制度。
2、登録住宅の改修費補助と家賃補助。
3、マッチングや入居支援
と大きく3つの枠組みからなり、生活保護以外で家賃を直接支援できる仕組みです。

引きこもりや8050問題が顕在し、今後の人口減少社会では、
これまで家族や地域が抱えてきた様々な暮らしの機能を、社会で支えていくことが求められています。
「住まい」もまたそのひとつです。
奥田さんは、これを「家族機能の社会化」と呼んでいました。

セーフティネット住宅の登録は、全国で17万戸を目標(横浜では1200戸を目標)に始まりました。
3年目を迎え、現在全国で約13000戸、横浜では102戸。というのが現状です。
なかなか、登録する大家さんの側にメリットが見出せないのが、
登録が増えない要因と言われています。

家賃補助は、制度を利用して入居する際に、上限月額4万円を(生活保護制度や住居確保給付金を受給していない低所得者など)要件を満たした場合に賃貸人に対し補助するものです。
横浜市は全国に先駆けて取り組み、今年度は1億3000万円が予算化されています。

制度の大枠が揃ったところで、必要となるのは
やはり、マッチングなどの相談や見守りといった支援です。
NPO法人抱樸では、住まいから就労、見守り、葬儀まで・・・
支援を一体で行える体制を整えてきました。
高齢者単身者、障がい者、ホームレス、生活困窮者、DVなど、対象者を限定せず、
相談から一貫して「断らない」支援を徹底しています。

横浜においても、生活困窮者、高齢単身者はもちろん増加する外国人など、
「住まい」の課題はこれから更に重要となります。8月には、居住支援協議会による相談窓口が設置されました。

「住まい」には、それにまつわる暮らしの課題もあり、伴走できる体制づくりが必要です。
登録住居を増やす取り組みとともに、分断された支援をつなぎ合わす包括的な取り組みを求めます。