ゲノム編集食品が食卓へ 〜表示とトレーサビリティの必要性〜

24日、「ゲノム編集食品が食卓へ 〜表示とトレーサビリティの必要性〜」
たねと食とひと@フォーラムによるシンポジウムが明治大学リバティタワーで開催されました。

ゲノム編集食品が、実質的に解禁。
しかし、安全性の審査は不要。届出は任意となりました。現状、届出は未だゼロ。事業者も様子見・・・という状況が続いています。
ゲノム編集食品の表示義務化を求めた署名活動では、44万を超える署名が集まり、関心の大きさを示す結果となりましたが、法規制に向けては、まだまだハードルが並びます。
市民の選択の権利を確保する観点から、適切な規制のあり方を考える機会として、シンポジウムが開催されました。

東京大学 塚谷裕一教授は、バイオテロの可能性を含む、ゲノム編集の届出義務化がされないことの危険性をお話しされ、透明性の観点からもしっかりと規制をすべきと問題提起がありました。

北海道大学 石井哲也教授 からは、消費者の選択の権利を求めた声にこそ答えるべき。として、表示の方法について様々な提案をされました。
塚谷教授と共通して提案があったのは、ブランド化としてのトレーサビリティの確保と表示。科学の分野では、新しいバイオテクノロジーの可能性を常に求める姿が垣間見えました。

また、サナテックシード株式会社 竹下達夫会長は、ゲノム編集で生み出した高GABAトマトの商品化に向けて、ゲノム編集をブランドとして最大限活用するために表示をしていく。
また、遺伝子組換えでアレルギーを起こした人はいない。との主張で、表示は、安全のハンコを押してもらうこと。
という立場からの報告がありました。

NHK報道局・科学文化部 水野雄太記者からは、ゲノム編集食品のアメリカ取材報告。アメリカでは、表示義務のないままに日本に先んじて既に流通が開始されています。
Calyxt(カリクスト)社のゲノム編集大豆油Calyno(カリーノ)は、オレイン酸含有率が高く、3倍長持ちするゲノム編集を施した大豆の油。
商品パッケージには、ゲノム編集の文字はなく、その代わり「NON-GMO(遺伝子組み換えではない)」と記載されています。
その油を使用するレストランの、メニューには、やはり表示はありません。
消費者への取材では、保守的な地域でありながらも「全然、気にしない」「どんな食品が使われているか、知る権利がある」という意見が2分したとのことでした。

私も参加をする「ゲノム編集食品調査チーム」報告として、中野陽子さんから、
「トマトジュース原材料調査報告」がありました。
日本では、登壇したサナテックシードが先導するトマトのゲノム編集がまずは商品化に向けて進んでいることを受けて、
・事業者のゲノム編集作物利用に対する姿勢を確認する
・消費者の立場から質問することにより、ゲノム編集の使用に注視していることを伝える
という目的で主にトマトジュースの製造販売会社8社に公開質問を行いました。
7社からの回答がありましたが、全社、現在のところは、ゲノム編集トマトへの切り替え予定はない。との回答。
ほとんどが、それを理由にその他の質問への明確な回答は得られませんでした。
(光食品のみ、ゲノム編集の届出義務の必要があるとの立場で、表示可能な場合には、表示すると回答。
調査結果は、今後、たねと食とひと@フォーラムHP上で公表予定)

第2部は、報告者と調査チームを交えてのパネルディスカッション。コーディネーターは石井教授
私も、生活者の立場で、パネラー登壇しました。
塚谷教授の報告に対し、会場にいらした筑波大学の大澤教授が、反論をするなど、興味深いやりとりが終始展開。目が離せない場面でした。

石井先生の「トレーサビリティはどこまで?」という投げかけに、
私たちにとっては、当然「飼料から・・・」だったのですが、
「飼料までとはいかないが、」という学者側とは、若干溝感じる結果になりました。
表示の仕方については、竹下会長の「ゲノム編集している」ことをブランド化するには、特段「表示の義務はいらない」という主張から、
ゲノム編集されたものだけ表示をする。など様々な意見がありました。
私は、先のCalynoのように、ゲノム編集食品に「NON-GMO」表示をされると、そもそもの「NON-GMO」表示の信頼が失われることにつながる不安を述べ、「ゲノム編集ではない」という表示が必要になると考えました。

「ゲノム編集食品」に対する考え方はそれぞれでありながら、「トレーサビリティの確保と表示の必要性」という一点の共通認識で、
議論を深めたシンポジウム。
ゲノム編集食品の規制と表示を求める動きは、様々な立場からの働きかけが必要ですが、その可能性を見出すことが出来ました。