近所に携帯基地局。さて、どう考える?
スマートフォンや携帯電話はもはや生活に欠かせない道具となり、多くの人がその恩恵に頼りながら暮らしているのが現状です。
しかし、生活に溢れる電磁波に健康を害されている人がいることも見逃せない事実です。
そんな中、ネット・青葉会員のお一人から、相談が寄せられました。
「ご近所の空き地に携帯電話の基地局が立つ計画があるのだけれど、近隣には不安の声があり、なんとかしたい。」
昨今こうした携帯基地局の設置をめぐるトラブルが増加していると聞きます。
私も、以前の住居のすぐそばに携帯基地局が突如設置された経験があります。マンションの屋根に設置された基地局は、高台の我が家からは目の前の高さにあり、小さな子どもを育てる身としては、不安を感じました。簡易な電磁波測定器を購入して測定してみると、基地局がある方角の寝室の窓で確かに大きく針が振れました。
しかし、電波の基準を満たしている以上、携帯基地局が立っている土地の所有者を非難できるものではありません。
不安やモヤモヤを抱えながら暮らすことのないよう、設置する際の地域の合意は重要だと感じていました。
今回の件は、ご相談から数日後、地域の方の取り計らいで説明会が開催されるということで、私たちも数人で参加をしました。
説明は、工事会社の担当者。集会所には、私たちを含め地域の人が12人ほどが集まりました。
担当者は、今回の基地局設置の経緯、位置などについて細かく説明をした上で、基地局が発する電波の大きさが基準値を大きく下回る電波であることなどを理由に、理解を求めました。
参加者からは、今後もっと大きな5G等の電波に変わった際の影響。長期間に及ぶ未だ解明されていない健康への影響についての不安が寄せられました。
また、今回設置する携帯電話会社を利用していないのに、電磁波にだけ晒されるのは納得できない。と言った意見もありました。
ひと通り意見が出て、今後の対応を協議しよう。というその時、工事担当者がおもむろに
「わかりました。今回の設置は中止します。」と告げました。
無理に設置して、地域のわだかまりを生むことは、会社の利益にならない。ということで中止が決定したのです。
会社名は出しませんが、この担当者の非常に丁寧な対応と企業の姿勢には、一同感激しました。
そして何より地域の方々が土地所有者にも配慮しながら不安の声を届けようと尽力されたことが、実を結んだのだと思います。
さて、今回知り得た問題点として、
設置事業者は、予定地の半径30mの住民にのみに基地局設置についてのお知らせを文書で投函していました。
しかし、電波は、30m圏内のみに向けたものではなく、それより広範囲に影響します。
曖昧な基準による情報の届け方には注意が必要です。
また、携帯基地局は各携帯会社がそれぞれ自社の為の基地局を持つことから、基地局が乱立し、トラブルの増加につながっていると考えられます。電波を共有できるような新たな仕組みの必要性にも気づきました。
総務省では、5Gの普及促進に向け、こうした基地局の共用化をはかるインフラシェアリングを進めています。しかし、各大手携帯会社の足並みを揃えることが難しく、一部での実施にとどまっています。また、交通信号機、公共施設等を活用した設置が検討されているとのこと。インフラシェアリングにより、基地局の乱立は防げるかもしれませんが、強い電波を警戒する声に応えることができるのか、今後の展開に注視が必要です。
便利の裏側にある、不安の声、地域の課題にも引き続き目を向けていきます。