多様な子育て支援、出向く支援の役割と可能性

3月6日の総会では、特別企画 フォーラム〜多様な子育て支援、出向く支援の役割と可能性〜を開催しました。

コロナ禍の子育て家庭への負担が大きくのしかかる中、その支援のあり方が問われ続けています。
里帰り出産が困難になった。親のサポートが受けられない。さらに家族が在宅することで、家事の負担は増えています。
こうした状況において、注目されたのがアウトリーチ型の(出向く)支援。
横浜市には、市民同士のたすけあいとしての子育てサポートシステムや、産前産後支援、育児支援・養育支援・ひとり親支援といったヘルパー派遣があります。
私たちは横浜エリア連携協議会、横浜ユニット連絡会とともに、サービスの提供者やヘルパーの不足を始め、制度の課題について政策アクションを重ねてきました。
そして、実際の事業に取り組むNPOでは、独自のアンケート調査等を行い、課題提起もされています。
今回は、そうした現場の声を捉え、次の一歩へつなげる機会として、フォーラムを開催しました。

● 特別非営利活動法人 ワーカーズ・コレクティブ パレット
子育てサポートシステム(通称:子サポ)についてお話しいただいたのは、子サポをコーディネートする青葉区の子育て支援拠点を運営する「特別非営利活動法人 ワーカーズ・コレクティブ パレット」の山田範子さん。
子サポは、市民同士のたすけあいの上に成り立つ事業ですが、支援をする側の提供会員は年々減少傾向です。
さらにコロナ禍で支援を控える傾向があり、一昨年から件数は大きく減少しています。
その上、困難な家庭の支援もあり、市民がたすけあいの思いで携わる事業では対応の限界を感じるシーンもあるとのお話がありました。
背景には、本来いずれかのヘルパー事業で担うべき事例までが、ヘルパーの不足や制度の制約等で子サポを頼らざるを得ない現状があるのではないかと推察されます。
例えば、産前産後ヘルパー事業では、夕方以降の支援は受けられない、きょうだい児の支援はできないといった制度上の制約があります。しかし、こうした支援へのニーズは非常に高く、その受け皿を子サポに求めるパターンが多くあります。これまでも指摘を行なってきたところですが、ヘルパー制度で柔軟に対応することが求められています。

● NPO法人 ピッピ・親子サポートネット
続いては、青葉区で産前産後ヘルパー、育児支援、養育支援、独自支援を実施しているNPO法人 ピッピ・親子サポートネットから若林ともこさん。
なかなか私たちが知ることのできない日頃から行なっている支援の様子をスライドで拝見しました。
様々な家庭があることは承知していますが、ヘルパーさんは、その家の、場合によっては空っぽの冷蔵庫の中まで見ることになります。何もない時にフードドライブの食材でお子さんと一緒に料理をしたり、「あたたかいね」と言って食べたというエピソード。その様子を伺うと、その支援の重要性と同時にヘルパーさんが掴む情報の有用性を感じます。
養育支援ヘルパーは、児童相談所の要請に従って行われるもので、虐待の心配がある場合など深刻度はより高いケースがあります。しかしながら、個別ケース検討会議などにヘルパーの参加が要請されることはほとんどないといいます。

● NPO法人 さくらんぼ
続いては、瀬谷区で産前産後ヘルパー、育児支援、養育支援、独自支援を実施しているNPO法人 さくらんぼの宮川典子さん。
瀬谷区は、ひとり親世帯、生活保護世帯の母子家庭比率などが市内で最も高い地区で、さくらんぼは、2005年から独自事業として産前産後のヘルパー派遣を行なっています。産前産後ヘルパー事業の開始が2010年ですから、先駆的に取り組んできたことがわかります。
宮川さんからは、さくらんぼが独自に取り組んだ産前産後利用者アンケートの結果についてご報告いただきました。

サービスを利用して、
・休息が取れたという人は、
とても効果があった、まあまあ効果があったを合わせて 88%

・不安が減ったという人は、
とても効果があった、まあまあ効果があったを合わせて 94%

と非常に高い数字となっています。

子育てに対する周囲の支えはありますか?という問いに対して、
いずれもないと答えた人は 28%にのぼります。
自由記述からは、「身体的にも精神的にもボロボロだった時に助けてもらえて助かった。」
「この制度がなかったらメンタル壊していた。身体的にも精神的にも助けられた。」
切実な子育ての状況が垣間見えるコメントも多くみられます。
一方制度に対しては、
産前産後ヘルパーは9時〜17時までという利用時間の制限がありますが、忙しい夕方や夜の支援を望む声。
産後5ヶ月(多胎児は1年)という期間に対して、成長が進み目が離せなくなる時期こそ支援が必要という声。
が多くありました。
制度を利用した人のリアルな声に、しっかりと向き合っていきたいと思います。

● 出向く支援利用数の推移
直近5年のヘルパー事業、子サポの実績と予定数をグラフにすると、画像のようになります。

2021年以降は、予定数なので、子サポについては減少が予想されます。

2020年度は、子サポの利用がぐっと下がっていますが、他のヘルパー事業は緩やかに増加しています。
ピッピ・親子サポートネットが2020年に行った産前産後ヘルパー事業者へのアンケート(以前のミニフォーラムレポートはこちらから)によると、
ヘルパー派遣の問い合わせに対し、
お断りをせざるを得なかったケースがあると答えた事業所は 63.6%

コロナ禍で問い合わせが増加したこと等により、ヘルパーの不足が大きな要因となっています。
つまり、潜在的なニーズはこれよりずっと多いことが推測されます。
同調査では、ヘルパーが足りていないと答えた事業所は、95.5%
ヘルパーの最も多い年齢層は60代以上
介護のヘルパーに通ずる課題が見えてきます。
これだけ必要性が叫ばれている職種にもかかわらず、いつまでも課題解決の道が示されていないことには憤りを感じるところですが、引き続き必要な対策を求めていきます。

最後はみんなでパチリ!


1時間のフォーラムでしたが、まだまだ掘り下げたい内容が残りました。
コロナ禍で脚光を浴びたアウトリーチ支援ではありますが、その可能性は非常に大きいものです。
今後も現場でこうした支援に取り組んでいるみなさんと、ネットワークを広げ、政策アクションにつなげていきます。