敬老パスのIC化どうなの?

横浜市の敬老パスIC化がこの10月から開始をされました。
IC化は時代とともに求められる流れ。と思っていた敬老パスのことを何も知らない私。現実はどうやらちょっと違うようです。敬老パスを利用している方から「ちょっと変だよ」の声が寄せられたことをきっかけに、シニアの方々とミニフォーラムを開催しました。

敬老パス制度(正式名称:横浜市敬老特別乗車証制度)の開始は、1974年。当時は全員無料でしたが、その後、利用者負担が導入され、今に至ります。現在の平均負担額は年額約5000円程度となっています。
制度開始当時と大きく違う現在の横浜市、制度対象の70歳人口73万人、制度開始当時は6.8万人ということですからおよそ10倍以上増加しています。交付者40万人を超え、2022年度の敬老特別乗車証交付事業予算約136億円にものぼります。
そして今回のIC化。2019年に設置された「横浜市敬老特別乗車証制度のあり方に関する検討専門分科会」による持続可能な制度設計の詳細検討のためには、より正確に利用実績を把握する必要があるとの答申をふまえ、実施されました。つまり、このIC化は、利便性のためのものではなく、あくまで調査のためのもの。ということになります。
IC化に向けた新たな利用管理システムを構築に際しては、公募型プロポーザル方式により選定された「FPM・MC共同企業体」に委託されています。その契約金額が約20億円

実際の敬老パスICカードは、独立したカードとなっていて、利用者は、PASMOやSuicaといった交通系ICカードとは別に所持します。そして、利用の際には、専用の読み取り機にタッチをして地下鉄やバスに乗車するようになっています。
バスは、運賃支払い機のそばにありますが、地下鉄は、改札のどこにあるのかわかりにくい。ということで、『敬老パス読み取り機』の案内を掲げた案内の人員が改札の中と外に一人づつ置かれています。
この方達に注目して、敬老パスのIC化を知った人いるのではないかと思います。調べてみるとこの説明要員はボランティアではありませんでした。シルバー人材センターに約6000万(内訳:人件費、研修費、管理費等含む)で委託され、地下鉄40駅中20駅に9時半から17時の時間配置されています。

だんだんとモヤモヤが募ってきたわけですが、ミニフォーラムの参加者からは、
・敬老パスのありがたみを感じているので苦にならない。
と言う人がいる一方で、
・敬老パスに関しての案内が3通もきてわかりにくい。
・PASMOとこのICカード、さらに有効期限を記したカードの3枚を持つことになった。
(iCカードには有効期限の記載がない)
・読み取り機が利用するルートから遠くて不便。
・なんのためにやっているのかよくわからない。
といった声がありました。

しかも、このICカードの注意書きには、(ICカードと同封された説明文書→おもて面裏面
「敬老パス(ICカード)をPASMOやSuicaなどの交通系ICカードと同じパスケースに入れた状態で、交通系ICカードの読み取り機に近づけると、交通系ICカードから運賃が引き落とされてしまう場合があります。引き落とされた場合は返金できません。」とあり、利用者は信号を遮断するカードを購入したり、新しいパスケースを新調し、2つ持ち歩くという工夫が必要になっています。高齢者でなくても混乱する状況です。
さらに、未設置のバスや読み取り機の場所がわからなかった場合には、乗務員・駅員に見せるだけで乗車は可能とされています。つまり、タッチしてもしなくても乗車はできるわけで、読み取り機は完全に調査のためのみの端末に過ぎないようです。

青葉区内は、バスが他都市に乗り入れている路線が多くあります。ミニフォーラムの中で、川崎市はどうなっているのだろう?と疑問があり、調べてみたところ、川崎市も同じタイミングでIC化に踏み切っていました。
しかも、PASMO、Suicaと統合しているではないですか!? (こんな感じ
なんだできるんじゃん!
ちょっと川崎市の話も聞いてみたい。と言うことでそれはまた次の機会に・・・

完全に利便性と切り離された今回のIC化。交通機関の適正な負担額調査ということだとしても、敬老パス無償化を公約に掲げた山中市長に交代したことで、当初の検討分科会が設置された時と現在の状況も違います。予算20億の費用対効果も疑問ですが、そもそも協力を求めるべき利用者には、調査の目的も伝わっているとは言い難い状況にあります。
こんなIC化どうなの?と問いたい。

敬老パス持ってるよ〜!とみなさん