女性と居住を考える

8月26日スペース・オルタで行われたフォーラム「女性と居住を考える」
生活クラブ神奈川がNagomo矢向をオープンさせるスタートフォーラムの第2弾です。
第一弾レポートはこちら

20年にわたって女性と住まいの支援に携わる共同の家プアンの郡司真弓さん、ウィメンズネット・こうべの正井禮子さんのお二人の講演でした。

開会は、生活クラブ神奈川の理事長 篠崎さんの挨拶から。そして、Nagomoのある矢向センターは、横浜市にありながら、川崎市にも隣接する土地であることから、住所地の主体である横浜北生活クラブ理事長の大池さんとかわさき生活クラブの理事長 野村さんからもご挨拶がありました。

大池さんは、初めは居住支援なんて「絶対に無理」と思っていたことを明かし、こうしたフォーラムや、現状を知るにつけ「『暮らしていく』ということを地域の中で組み立て直す必要があると感じた」と率直に、生活者の立場からの思いをお話しされていました。

野村さんは、地域で目にしてきた女性の貧困という課題に、こういう形で応えていける新たな取り組みを大切に組合員と育てていきたいと熱いメッセージがありました。

左から篠崎さん、大池さん、野村さん

共同の家プアン 郡司真弓さん

NPO法人共同の家プアンとは、女性支援の現場からの声を幾度となく提言いただき、昨年度は、共同研究も行いました。(過去記事

20年で116ケースを見てきた郡司さん。プアンの利用者は、はじめは、DV被害者の外国籍女性が主体でしたが、DV防止法の成立から、表に出てきたDV問題により日本国籍の中高年女性が増加し、今は、若年の女性が多く、その背景のほとんどは家族からの虐待です。

10〜20代の利用者分析によると、入所理由の84.3%が親からのDV。そのうちの3割は、性暴力というショッキングなデータが・・・

知的や発達障害を持つ人や、ボーダーの女性も多くいるそうで、暴力という不安の中で育つことは、前頭葉の発達に大きな影響があると言われ、親からのDVに大きな要因があると郡司さんは推察していました。

売春防止法、DV防止法ができてもどちらも「禁止法」ですらない。逃げ続けるしかなかった被害女性が、ようやく女性の権利をうたう「困難な女性への支援に関する法律」が2022年に成立。この法律を活かしていくにはまだまだですが、支援を継続し、現場の声を政策提案し続け、市民社会を豊かにしていかないとならない。と力強く訴えていました。

ウィメンズネット・こうべ 正井禮子(れいこ)さん

ウィメンズネット・こうべの正井禮子さんは、女性支援の第一人者として知られているその道の有名人ですが、ちゃんとお話が聞ける機会に私も期待大でした。

1994年に「女たちの家」を開設した活動のスタート。
1995年の阪神淡路大震災によって、その家を失うも、震災時の女性支援にも取り組みながら、2004年にシェルターを開設。そして、今年6月には正井さん念願の、40室を構える「六甲ウィメンズハウス」をオープンされました。

正井さんが影響を受けたというデンマークでは、シェルターがなんと出入り自由なのだそうです。DV被害となれば、安全の確保ばかりが優先されますが、(よく考えれば当然だけれど)

『被害女性は、自由に暮らす権利がある』
という権利意識がしっかりと根底にあるのです。

「SOSを出した女性に支援、守る責務は自治体にある」もっと言えは「尊厳あるくらしが営めているか、それを確認する責務が自治体にある」という「人権」に基づいた支援が行われており、日本においてはその大前提が、抜け落ちてはいないか・・・と目から鱗。

尊厳あるくらし

国際人権規約でも、なんなら憲法でも、尊厳あるくらしは、国によって保障されるべきものなのですが・・・現実はどうでしょう?

今の日本の福祉は「申請主義」と言われますが、女性支援もまた、いわば対処療法的なのですね。問題が起きて、ようやく声をあげた人にのみギリギリ対処をするように施策が組まれる。また、必死に困難な状況にある女性を支援している人たち(団体)自身がその存続や未来に不安を抱かざるを得ない。そうではなく、多様な支援を可能にする柔軟な政策制度と、最も重要な人権を守ることに対しては、きちんとお金をかけ(予算措置し)てほしいと思うのです。
同時にDVや虐待にあった人が、回復し、決して引け目を感じることのない広い社会を作っていくこと。それもまた政治の役割ではないでしょうか?

尊厳あるくらしを送ることに住まいは欠かせない。安心して暮らせる住まいの提供が、確実に自立の一歩になることをプアンやウィメンズネット・こうべの活動は示しています。

そして、困難を抱えた女性の支援の先には、子育て・介護と多く女性が担ってきたしごとなど生活の中にある様々な課題。そして社会のジェンダーギャップが私たちに突きつけられます。
今日のこの一歩をこれからの社会にしっかりとつなげていく、歩みを止めないように進めていきます。

主催の伊藤保子さん

首藤県議、正井さん、郡司さんと記念撮影!