PANORAMA TALK VOL.01「ぴっかりカフェ」の取り組み

左から黒川さん、石井さん、松田さん、鈴木さんによる軽快トーク

 12月6日さくらWORKSで行われた『PANORAMA TALK VOL.01』に行ってきました。神奈川県立田奈高等学校の学校図書館「ぴっかりカフェ」を運営するNPO法人パノラマが一周年を迎え、パノラマのメンバーである4人(石井正宏さん(代表理事/シェアするココロ)、鈴木晶子さん(インクルージョンネットかながわ 代表理事)、松田ユリ子さん(田奈高校学校司書)、黒川祥子さん(ノンフィクション・ライター)が語り合うトークショー。

ぴっかりカフェ。気になるポスターがお出迎え

「ぴっかりカフェ」に、先日私もお邪魔してきました。昼休みには一気に200人近い生徒が押し寄せ、石井さんは彼らを「ハングリーモンスター」と呼んでいましたが、まさにそんな感じ。お菓子や飲み物を目当てにたくさんの生徒がやってきますが、その中から時折深刻な相談につながることもあるのだそうです。困難を抱えていても、自分は困っているという認識があり、適切な援助を求めることは、非常にハードルが高いこと。「ぴっかりカフェ」には食べ物があって、飲み物があって、文化がある。それが、入り口になるのだ。と鈴木さん。
潜在的な課題をキャッチするのが、「ぴっかりカフェ」の取り組み。しかし、その潜在的な課題というのは、ややもすると「パンドラの箱」。この箱を開ける覚悟を持っていたのが田奈高校だったのだと石井さんは言います。さらに鈴木さんは、「パンドラの箱」を学校だけに開けさせるのではなく、それを地域でも担っていく、地域にも覚悟をもつことも大切だとお話がありました。田奈高校の中野校長は、クリエイティブスクールだった田奈高校の持っている素地に様々ないい出会いがあって、この「ぴっかりカフェ」が生まれたのでは。と解説をされていました。

「ぴっかりカフェ」人を惹きつける魅力ある空間でした。司書の松田さんのセンスの賜物!

石井さんが「ぴっかりカフェ」を語る時、「支援」「相談」「貧困」といったワードはあまり出てきません。高校生たちがそのような言葉で語られることにどのように感じるか。という繊細な問題があり、負のレッテルに繋がってゆく恐れもある。その伝え方には、明快な答えに至っていないと言っていました。
私が「ぴっかりカフェ」に行った時、男子高校生に「ここ、時給いくら?」と聞かれたのですが、一瞬答えに戸惑いました。お金はもらっていないと答えると、その子が「あ、家事が嫌になったんでしょー?」と返して「そうそうー」と笑いあったのですが(確かにその通りかも)その後、この会話を思い返しながら、ここにおばちゃん達がやってくることをこの子達はどんな風に捉えているのかな。と思って、私が答えるべき言葉は他にあったのだろうか?と考えさせられたところでした。
「ぴっかりカフェ」の取り組みを対外的に語る時には、直接的なネガティブなワードで伝えることも大切な場面もあり、それもまたパノラマの皆さんは華麗なバランス感覚で乗り越えている(ように見える)。松田さんが「支援が必要な子どもは、他にもたくさんいる。どこの学校にもあっていい取り組みなんだ」という趣旨のことをおっしゃっていて、一つの答えにつながるのかな。と感じました。

「ぴっかりカフェ」のスライドを上映しながら解説をする松田さん。

この議論、とても重要な問いかけだったと思いました。

今回のトークショー、コーディネーターを務めた黒川さんのテーマの投げかけも絶妙で、一瞬たりとも聞き逃せないような、示唆に富んだやり取りでした。
これからの「ぴっかりカフェ」とパノラマの取り組みにも注目していきたいと思います。