ギャンブル依存症を考える
生活クラブ主催、横浜未来アクション共催の連続講座
「私たちの未来にカジノは必要か?」
第2回は「ギャンブル依存症を考える」精神科医でことぶき診療所所長の鈴木伸さんの講演でした。
前座では、横浜未来アクションからこれまでのIR誘致の状況等を共有しました。
ギャンブル依存症が病気として認められたのは、1970年代です。
最近わかったことでは、脳の機能障害だということ。
「否認の病気」と言われ、嘘をつく、依存状態を認められない。などの特徴から、実態把握が難しいとされています。
横浜市では、現在実態調査が行われており、神奈川県は来月から調査を予定しています。市長は、説明会の中で「完全把握する」と言いましたが、果たして可能なのでしょうか?
パチンコで子どもを放置し死なせてしまう痛ましい事件が兵庫県須磨でありました。
鈴木先生はこの件を「どうして子どもを放って、パチンコなんて…」という当然の思いに対し、これこそがギャンブル依存症という病気である。どんなこともブレーキにならないことの証として引き合いに出しました。
通常、私たちの脳では前頭葉がブレーキを踏む役割を果たしますが、依存症になると、依存対象を前にすると、前頭葉が徐々に働かないようになり、ブレーキが効かなくなってします。アクセルが全開の状態になるのだと言います。鈴木先生は車に例えて、ブレーキの故障した車は、どんなに気をつけて乗っても、必ず事故を起こす。と説明されました。
ギャンブル等依存症対策推進計画を策定しようとしている神奈川県では、競馬も競輪もパチンコも「適度に楽しみましょう」と啓発しています。しかし「程よく」とか「適度に楽しむ」というのは、ブレーキの効かない脳には、通用しないということが、理解できます。
つまり「やらない」という以上の有効な手立てはない。ということです。
「世界最高水準の依存症対策、しっかりやりますから、安心してください。」という市長は、いかに無責任か、よくわかりました。
日本という国は、誰でも(たとえ未成年であったても気づかれなければ)ふらっとパチンコ屋に入ることができます。そんな国は、世界のどこにもありません。と鈴木先生。そして、世界中のEGM(電子ギャンブルマシーン=パチンコ・パチスロ)の58%は日本にあります。
カジノができた場合にギャンブル依存に陥る人の率は、推進派の調査で1~2%とのこと。1000万人で20万人、横浜市の資料では、IR訪問者数は、最大4000万人ですから、80万人はギャンブル依存に陥る推計です。推進派の試算ですから、最小の見積もりで、横浜市民の1/4を飲み込む数字。カジノは、パチンコよりも被害額が大きく、パチンコでは依存しなかった層にもリスクが及びます。
ギャンブル依存は、配偶者、子供、親・兄弟姉妹、知人・会社・社会など周囲を巻き込み、壊しながら進行し、なかなか治療に結びつかない病。その恐ろしさをよく知る県内の精神科医や精神病院の団体は、明確にカジノ誘致に反対を表明しています。
そもそも賭博が禁止されている理由は、長い歴史の中で、多くの人が生活を破綻させ、苦しんできたからに他ありません。
それを無理に合法化するIR法は、誰の利益か、未来を見据えた政策とは到底思えません。