県外調査1 ー福島の12年 マイスターハイスクールー

文教常任委員会の東北への県外調査を報告します。
4つの高校を視察しました。4回に分けて報告します。

福島県立小高産業技術高等学校

神奈川県教育委員会では、県立高校改革基本計画で、重点項目に社会状況や産業動向等に対応した専門教育の充実を掲げています。県内の地域産業を担う人材を育成するため、地域固有の自然環境や、歴史、風土などを生かした専門教育の推進も検討するとしており、「マイスターハイスクール指定校」である福島県立小高産業技術高等学校の取り組みを視察することとなりました。

福島の12年
小高産業技術高等学校は、福島第一原子力発電所から15kmの位置にあり、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故により、大きな被害を受けた地域にあります。その背景は非常に重く、事業テーマは、「ふくしまの未来を創るテクノロジスト育成」。2017年度開校(小高商業高校と小高工業高校が統合し新設)から、東日本大震災からの復興に向け、教育活動を通して、地域のコミュニティ再生や地域復興を担う人材の育成に取り組んできました。地域課題の解決、これからの相双地域、さらにはふくしまの創生を担うテクノロジストの育成を図るため、自治体、産業界と学校が一体となり、次世代に向けた人材育成モデルを構築するというミッションを持っています。

一方で、震災の爪痕も大きく、高校のある南相馬市小高区の人口は、震災前と比較して3割。小高産業技術高等学校の定員充足率は5割程度、更に学校近隣から通う生徒はたった3人、と、子ども・若者が地域に帰っていない現状があります。

人柄が滲む朴訥とした語り口で佐竹校長は、「福島の12年」を口にされました。
この間、どういう子供たちを育てなければならないのか?と問われてきた。社会に貢献する。地域に貢献することを教えないと復興が途絶えてしまう。
こうした強い復興への地域の思いを背負い、その責任から生まれた学校です。

開校の2017年からスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール事業の指定を受け、3年間「東日本大震災・原発事故からの地域復興を担う人材育成」に向けた学習プログラムの開発に取り組んできました。2021年度からマイスター・ハイスクール事業の指定を受け、学習プログラムを更に発展させ、実践を行なっています。

4C+1C
生徒に身につけさせたい資質・能力として『4C+1C』を掲げています。
創造(create)、継続(continue)、挑戦(challenge)、協働(cooperate)する力
+貢献(contribute)できる力
「貢献」というところに強い思いを感じざるを得ません。

具体的には、

1、ロボット技術(災害・廃炉)に関する分野
自動制御ロボットの製作を通じ、そのテクノロジーの災害や廃炉事業へ応用を見据えています。

2、再生可能エネルギー(水素・太陽光・風力)放射能に関する分野
EV自動車を製作しています。耐久レースにも出場し、スキルを磨いています。

3、制御技術(AI・ドローン)に関する分野
福島県では、全ての学校にドローンがある。と校長。しかし、規制が進むにつれ、ドローン技術取得はできるが、資格取得等には壁があるそうです。

4、分析技術(水質・大気・土壌)に関する分野
震災で失われかけた大堀相馬焼。生徒自ら、発展に寄与したいと、粘土をほり放射能値を測定し、安全を確認していながら取り組んでいます。

5、航空・宇宙産業に関する分野

6、スマートシティ(マーケティングテクノロジー・観光資源)に関する分野

の学びが提供されています。

生徒製作のEVカー

また、マイスター・ハイスクールCEOには、企業の現役役職者を事業の統括者として密な連携を生み出しています。

神奈川県では、先の定例会で厚木商業高校が厚木東高校と統合再編されることが決定し、商業高校と名のつく県立高校は、なくなります。(学科としては残ります)

地域の即戦力として、専門知識と技術を身につける専門高校の魅力を見せつけてもらいました。何よりも生徒が生き生きと学びにのめり込み、力を発揮していく様子に、可能性を最も感じます。一方で、工業科希望者の減少は顕著で、卒業進路も進学希望が増加しているとのこと。全国的なニーズの変化も窺えました。

余談ではありますが、小高産業技術高校の校歌は、柳美里さん作詞、長渕剛さん作曲なんです。超豪華。かっこいい自慢の校歌は羨ましい。

今回、災害の爪痕は視察していませんが、福島の豊かな自然ととても整備された道路と空き地にしばし思いを馳せました。