食の未来

1月28日は、明治大学グローバルフロント・ホールにてたねと食とひと@フォーラム10周年のシンポジウムでした。(オンライン併用)

たねと食とひと@フォーラム のあゆみと取り組みの報告が事務局長の西分千秋さんから、
調査チーム報告が高橋明子さんからありました。そして、講演は、

「食と農の未来を探してー複雑さに耐えつつ実践を築く」
事業構想大学院大学 専任講師・農学博士 田村典江さん

岡本よりたかさんによる
暮らしの自給農「採種権利を守るための自給的暮らし方」

の2本。さらにたねと食とひと@フォーラム代表の石津大輔さんコーディネートでパネルディスカッション。という盛り沢山な内容でした。

私は、たねと食とひと@フォーラムの調査チームの一員として、調査活動や冊子の制作に取り組んでいます。

海洋循環は今世紀半ばにも停止か「早ければ2025年」

冒頭から、ゾッとするニュースの紹介で始まった田村先生の講演。

気候変動・温暖化といった言葉で、私たちは環境問題を語ってきましたが、田村さんは、プラネタリー・バウンダリー=地球の限界という総合的な物差しを教えてくれました。

それによれば、2023年9つのうち既に6つのプロセスで、地球は限界を超えている。とのこと。その中には、CO2等も含まれますが、例えば、主に化学肥料によるリンや窒素の循環、新規の化学物質汚染、水利用なども限界を超えています。これらは農業に密接に関連する事項です。リンや窒素が限界を超え、環境に流出していくことで、温室効果ガスを排出し、土壌、河川、大気汚染につながっているのです。

人新世

私たち人類文明を育んだ完新世を自ら壊し、人間活動が地球という惑星を変化させる時代に入った。と聞くと辛いものがあります。
こうした動きは、1950年を境に一気に加速しており、そこには工業型農業や畜産、水産業も大きく関わっているのです。もちろん、その担い手が悪いと言っているわけではありません。そうした食料システムが資本主義に組み込まれてしまったことが、今の状況を引き起こしたのだろうと思います。
人は、この50余年で爆発的に多くの食料を生産するようになったけれど、

なぜ「飢え」が無くならないのか?

答えは、人の口に入らない加工原料、家畜飼料といったものが多く生産され、「食べもの」ではなく「商品」として消費されていくからだと言います。超加工食品といった栄養のない食品に形を変え、飢餓がなくならないのに、肥満と生活習慣病が増加する矛盾を生んでいく・・・。
工業型農業により気候変動や環境問題を引き起こす一方で、引き起こされた干ばつや暴風雨は、農業を直撃します。加害者にも被害者にもなる、これまた矛盾・・・

人新世の食をどう生きるか?
私たちに何ができ、どうすればフードシステムは変わるのか?

というのが、最後に私たちに投げかけられた問いです。
今や前線は「家庭調理」にあるのでは・・・と田村さん

自給農のススメ

岡本よりたかさんの講演は、少し田村さんの答えになるものに感じました。
岡本さんの人生は実に波瀾万丈ですが、自然農を始めた後、46歳の時に破産を経験しているそうです。でも不思議と不安がなかったと言います。なぜなら「食べもの」があったから。

食べ物は、お金に変えるのではなく、食べればいい。そこで、自給農のススメ

全部作らなくていい。いざという時に作物を作れる知識と経験を持っておくことが大切だと言います。
知っての通り、穀物輸入価格は高騰、同時に肥料が高騰しています。肥料原料は大半が輸入に依存しているのが現状です。

つまり、食料危機はもう来ている。

既に、食べても栄養にならないものが溢れているし、いずれ食べられなくなるかもしれない。
能登地震でも明らかになった通り、流通が滞ったらあっという間に「食」が滞る。
そこで、食べ物を経済から切り離した暮らしを提唱しています。

とても共感。私もそんな一歩を踏み出したいな。と思っていて、密かな今年の目標は、「小さな庭に小さな畑を作ること」だったのですが、敢えて決意をここで表明しておきます。
本当に小さな一歩ですが・・・

ゲノム編集

パネルディスカッションでは、私たちの興味の対象でもある「ゲノム編集」についても質問がありました。お二方とも、ゲノム編集をはなから否定するのではなく「技術には賛成。使い方の問題」とおっしゃいます。これからの社会に技術として必要なシーンが出てくるであろう。でも、現状の流通には問題がある、というスタンスでした。
私たちも、技術を否定するものではなく、「ゲノム編集食品」であることがわかる「表示」の必要性を訴えてきました。

そして、情報に対して、正確さと平等さを求める。客観的に引いて見る視点が必要だと岡本さん。フラットな目線が必要だと田村さん。
私たち調査チームが情報を得る際に、偏らないフラットさを大切にしてきたことを評価していただいたのは何より嬉しかったです。

食べてたの?遺伝子組み換え食品

そして、この日は3冊目の小冊子「食べてたの?遺伝子組み換え食品」のお披露目でした。遺伝子組み換え表示の改正を受け、制作しました。なかなか苦労してようやく発行にこぎつけ、感無量です。 頒価は100円。冊子のお問い合わせはこちらこちら