視察報告4 ー 広大なフィールドで「食と環境」を研究 ー東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センター

8月28日、視察の最後は、宮城県大崎市の川渡(かわたび)にある、東北大学大学院農学研究科附属複合生態フィールド教育研究センターを訪問しました。
センター長の小倉振一郎教授から、センターの概要や研究内容について説明をいただきました。

川渡フィールドセンターは、山地から低地まで約2,215haという、大学附属農場として全国最大規模の広大なフィールドを持ち、森林、草地、農地が一体となった環境を生かして、農業や畜産、森林などについて幅広い教育・研究を行っています。現在のセンターは、農場と海洋生物資源教育研究センターを統合し、2003年に設置されました。(東北大学農学部)

川渡はかつて馬の産地で、軍馬の育成にも利用されてきた歴史があるとのこと。現在では、土壌と作物を研究する「栽培植物環境科学」、鳥獣被害対策やアニマルウェルフェアなどを研究する「草地-動物生産生態学」、資源循環などを扱う「動物環境管理学」、森林の遺伝的多様性の保全など、多様な分野の研究が行われています。

また、川渡だけでなく、女川の沿岸域や仙台・青葉山ともつながり、陸域から海域までを対象にした研究・教育を展開しているのも特徴です。(東北大学農学部)

実際の農地だからこそ見えてくるもの

現地では、水田や草地、牛舎などを見学しました。

水田では、慣行栽培と有機栽培を隣り合わせに配置し、同じ条件のもとで比較する研究が行われているそうです。お話では、収量には約2倍の差があるとのこと。環境負荷を抑えながら、農業としての生産性をどう確保していくのかという課題を、実際の農地で検証しています。

川渡の土壌は火山灰に由来し、有機物を豊富に含む一方、非常に強い酸性を示すという特徴があります。その特性を生かしたブルーベリー栽培なども行われていました。

一方、牧草地では、近年の暑さによる「夏枯れ」に加え、台風や大雨の影響も課題になっているとのこと。農業や畜産の現場が気候変動の影響を直接受けていることを、ここでも実感しました。

農業・環境・生態系を一体で考える

川渡フィールドセンターは2011年から文部科学省の「教育関係共同利用拠点」に認定され、東北大学だけでなく、他大学の学生にも実習・教育の場を提供しています。2026年4月からも引き続き5年間の認定を受けています。(東北大学ウェブサイト)

今回の宮城県視察では、農業、水産業、先端科学、そして大学におけるフィールド研究と、それぞれ異なる現場を訪ねました。最後にこの広大な川渡のフィールドを歩き、食料生産を「農業」だけで捉えるのではなく、土壌、水、森林、生態系、気候、そして家畜との関係まで含めて考えていくことの重要性を改めて感じる視察となりました。