ワーカーズ・コレクティブの価値を改めて考える
「難しいけど、やっぱりW.Coで運営したい」
5月23日、NPO法人 ピッピ・親子サポートネット総会特別企画として開催されたパネルディスカッション「難しいけど、やっぱりW.Coで運営したい」に参加しました。
コーディネーターは、ピッピ監事であり、かながわ生き活き市民基金理事長の荻原妙子さん。
ワーカーズ・コレクティブ(W.Co)の成り立ちや運営の実践、そして「働くこと」の意味について、多様な立場から率直な意見が交わされました。
「ワーカーズってどういう働き方?」
W.Coミズキャロットすすき野/元ワーカーズ・コレクティブ連合会理事長 酒井由美子さん
1982年に誕生した「ワーカーズ・コレクティブにんじん」から始まったワーカーズの歴史が紹介されました。
ワーカーズでは、
- 代表や会計などの役割を“代わりあう”
- 一人一票で決める
- 情報を共有する
- 全員参加のミーティングで意思決定する
といった、民主的な運営を前提にしています。しかし、それは決して簡単なことではありません。「声が大きい人でも、一人では弁当は作れない」という言葉が象徴的でした。
役割を分担しながら、お互いを理解し、支え合う。
大変さもある一方で、「理不尽ではない組織」であることを大切にしてきたと語られました。
私が一番ワーカーズを理解しやすい表現と感じたのは、組織を縦型にしない。ワーカー同士が自立した関係性を持つというところ。縦型組織が当たり前の働き方から見た一番の違いではないかと思います。
また、「初めて参加した時に言った意見が採用された」「ミーティングの翌日は、なぜか皆が活発になる」といったエピソードからも、話し合いを通じて人が主体的になっていく様子が伝わってきました。
「W.Coを外から見ると」市民金融から見たワーカーズ
元女性市民コミュニティバンク理事長/元横浜市議・元神奈川県議の向田映子さん
ワーカーズが生まれた当時、女性たちは
- 法人格がない
- 資産がない
- “働いていない”と見なされる
という理由から、金融機関から融資を受けることが難しい状況にありました。
そうした中で、「ないなら自分たちでつくろう」と、市民による金融の仕組みに挑戦したことが紹介されました。
融資審査では、
- 地域貢献性
- 民主的な運営
- 上下関係がないこと
- 正直であること
などを重視してきたとのこと。
「応援したいという気持ちも大切にしてきた」という言葉が印象的でした。
働く人を主体にしたい
ピッピ・親子サポートネット副理事長 友澤ゆみ子さん
「子どもの主体性を大切にしたい」からこそ、働く人を主体にする。という思いから、ワーカーズという運営形態を選んだことが語られました。
“働かされる”のではなく、自分たちで考え、話し合いながら運営する。
その積み重ねが、子どもたちの育ちにもつながっていることを感じました。
その当事者でもある、参加者を交えてディスカッションが行われました。
「人を否定しない」
「“なぜならば”を伝える」
「自分ごととして関わる」
といった言葉が共有される一方で、
「若い世代には、“意見が言える”ことが魅力になりにくい」
「責任を持ちたくないという空気もある」
といった課題も率直に語られました。
また、
- 必要とされる事業を自分たちで立ち上げる誇り
- 合意形成の難しさ
- 利用者と“同じ側に立つ”ことの大切さ
など、現場ならではの実践知が共有されました。
「既存の働き方」とは違う価値観
私自身も、
「既存の働き方しか知らないと、ワーカーズを理解するのは難しい。責任の持ち方や意見の出し方が根本的に違う」と発言しました。
上下関係や効率を前提とした働き方とは異なり、ワーカーズでは、一人ひとりが主体的に関わることが求められます。それは大変さもありますが、「自分たちで決める」ことの面白さや手応えにつながっているように感じました。
ワーカーズを生み出して45年。もう一度言葉を尽くして社会へこの働き方を提案していきたい。多様な働き方の一つのみならず、必要な事業を生み出す手法としても社会を変えていくことにつながると考えます。
「人」に尽きる
最後のまとめでは、向田さんの言葉「“人”に尽きる。最初のワーカーズ・にんじんは『人人』と書いた」
また、酒井さんからは「ワーカーズは社会参加であり、自己実現でもある」という言葉も印象に残りました。
最後に、ピッピ・親子サポートネット理事長の若林さんからは、
「ワーカーズは、地域社会を良くしたいという“良心”と、働くことが連動している」
という挨拶がありました。
「難しいけど、やっぱりW.Coで運営したい」
そのタイトル通り、話し合い、合意し、支え合いながら運営していくことは簡単ではありません。
それでも、その難しさの中にこそ、人が育ち、地域が育つ可能性がある——。
そんなことを改めて感じる学びの場となりました。

