生活困窮者自立支援全国研究交流大会 1日目

111211月12日川崎市教育文化会館で、生活困窮者自立支援全国研究交流大会が開催されました。
2日間にわたる大会に、全国から集まった参加者で、広い会場はほぼ満杯!
生活困窮者自立支援制度は、開始されて、1年半、次期見直しまであと1年半という折り返し地点にきました。
この日は、国会議員や自治体、学識者から現場まで、様々な角度からの報告がありました。
基調鼎談は間に合わず、見逃してしまいましたが、本当に濃い一日でした。
東京大学 社会科学研究所 玄田有史教授の特別講演は『希望学から考える困窮者支援』
玄田教授の講演を聞くのは2度目ですが、笑いが随所にちりばめられた安定の面白さ。
「土曜日って最高だよね」から入り、元フジテレビ名プロデューサーの横澤彪(よこざわたけし)さんの新入社員を前にした時のお話で、すっかり引き込まれてしまいました。
「人生必ず大きな壁にぶつかる。けれど、大きな壁は決して乗り越えられない。大事なのは、壁にぶつかったら、壁の前でちゃんとウロウロすること。」と言ったエピソード。
壁が乗り越えられたら、壁じゃないですよね。と言われると、そうなのかもしれない。壁を前にして、ウロウロすることで、壁に小さな亀裂を見つけるかもしれない。そういう事が案外大事だったりするもの。実は深い示唆が込められたエピソードでした。
それから、震災以降、特に頻繁に聞かれるようになった『絆』ということば。
この意味を掘り下げていくと、大きく分けて『絆』には二つあるのだそうです。
一つは「ストロングタイズ(強い絆)」これは家族や血縁関係のような関係。安心感、幸福感といったものにつながる絆。そしてもう一つは、「ウィークタイズ(ゆるい絆)」。たまに会う人、共感しあえる仲で、気づきを得ていくような関係を指し「ウィークタイズ」こそが希望の源になる。という指摘でした。
生活困窮者自立支援制度は、社会に「ウィークタイズ」を広げることだと玄田教授は言います。
「希望」は動いてもがいてぶち当たるもの。与えられて得るものではなく、自分の力で作ったり育てたりするもの。
そんな風に、生活困窮者自立支援制度は「希望」を見出すのかもしれません。
続いて徹底討論『孤立させず、地域でつなぎ支えるには』
コーディネーターは、認定NPO法人抱撲理事長の 奥田知志さん。
冒頭、玄田教授のお話を受けて、この制度が目指すものは「人を大切にする。」こと。実は牧師さんでもある奥田さんは「神様は、どうでもいい人を作るほど暇ではない。と信じている。」とお話されました。会場に集まった多くの人が何らか制度に関わっている人だと思うと、暖かい気持ちになりました。
パネラーは、法政大学 現代福祉学部 教授 湯浅誠さん
長野県社会福祉協議会 相談事業部自立支援グループ 主事 山﨑博之さん
特定非営利活動法人 全国コミュニティライフサポートセンター 理事長 池田昌弘さん
NPO法人 ワーカーズ・コレクティブ協会 専務理事 岡田百合子さん
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現場の報告から、制度の問題点まで率直に語られました。
・自由度の高い制度なだけに、生まれる自治体間格差。
・就労が終わりなのか?制度からの出口問題。
・包括といいながら、生活保護との「分断」に問題があったのでは。
・めざすべき「地域」とは?
といった実に様々な課題、問いかけや、議論がありました。結論は出ませんが、対象が「人」である以上、解決策は一つではない。そういう事に対して幅をもたせた制度をどうやって使っていくのか。というアイデアが試されているということなのだと感じました。
パネラーからは、
・就労準備を利用する人が少ない。
・自立相談支援の先のつなぎ先がない。
・市町村が弾力的に対応しなければ、抜け落ちる人は拾えない。
といった、横浜市の課題にも通じる課題も投げかけられました。
持ち帰って、しっかり向き合って考えるお土産もいただきました。